エピソード
思い掛けなく最近、明治時代の琳琅閣書店へあてた名士の手紙を四、五十通ほどまとめて手に入れました。
殆どが池の端時代のもので、百年以上前のものです。
幸田露伴、日下部鳴鶴、中村正直、田中光顕、市島春城、川田雪山、中村不折、犬養木堂、徳富蘇峯、町田久成、清国公使館、李王家のもの等があります。
「琳琅閣の奥座敷は、明治時代の名士の寄り集うサロンのようなものであった。」
とはよく聞く話ですが、さながらそれを彷彿とさせるような手紙群です。
この手紙は、幸田露伴からのものです。
琳琅閣の初代が淡路町時代に、ニコライ堂の聖書を多く扱った為に、バイブルと綽名されたことは、人名辞典にも出てくる有名な話ですが、それを証する珍しいものです。更にこの綽名は、同業者間だけではなく、顧客からも親しみを込めて呼ばれていたことは新発見でした。
琳琅閣は今もこの手紙群に出てくるような古典を数多く扱っております。これからも営業努力を重ねて、次の時代により多くの古典を伝えて行きたいと願っております。
旧倍のお引き立てをお願い申し上げます。
ついでながら、琳琅閣の由来をよく聞かれます。
清朝の宋元版や珍本を多く収蔵した書庫の名前で、東京府知事を勤めた大久保一翁の命名によります。